一棟アパートの管理費には様々な内訳があることを知っていますか?
この記事では「一棟アパート経営で知っておきたい管理費」について解説しています。結論、一棟アパートの管理費は、アパートの状態に合わせて設定することが重要です。
一棟アパートの管理費を検討する際、知っておきたい「管理費の相場」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「管理費の内訳」や「初期費用」について説明していますので、この記事を読んでアパート経営の参考にしていただければ幸いです。
また、「アパートの管理委託でかかる費用」について知りたい方は、こちらで解説をしているので、ぜひ確認してくださいね。
一棟アパートにかかる管理費の相場
一棟アパートの経営を考えるにあたって知っておきたいのが、管理費の相場です。アパートの構造によって、大きな差が生まれます。
以下のように分かれているので、アパートがどの項目に当てはまるのかを把握しておく必要があります。
- 物件タイプ
- 築年数(木造)
- 築年数(非木造)
物件タイプ
一棟アパートの管理費は、物件タイプによって管理費が分かれます。物件タイプとは、単身向けかファミリー向けかです。住む物件を探す際に意識した方も多いでしょう。
それぞれ住む人数や目的、用途が異なるため、当然ながら管理費も変わります。以下が相場です。
物件タイプ | 相場 |
---|---|
単身向け | 15,000円 |
ファミリー向け | 19,000円 |
ファミリー向けの方が高い傾向にあります。金額の差は大きいため、アパートがどちらの物件タイプか把握しておきましょう。
築年数(木造)
一棟アパートの管理費は、物件タイプ以外に築年数でも大きく変わります。基本的な考え方として、築年数が長ければ長いほど管理費がかかるからです。建物の経年劣化や修繕費用が関係しています。
物件タイプで分けたのが以下の表です。
物件タイプ | 相場 |
---|---|
単身向け:築10年以内 | 8,640円 |
単身向け:築20年以内 | 8,247円 |
単身向け:20年超 | 8,711円 |
ファミリー向け:10年以内 | 15,619円 |
ファミリー向け:20年以内 | 13,842円 |
ファミリー向け:20年超 | 14,093円 |
木造の場合、10年~20年で一旦下がり、20年を超えると管理費は再び上がっていく傾向にあります。アパートは築15~20年経過すると空室が目立つようになります。
その関係性もあって、相場が下落気味です。目安にはなりますが、相場感は掴んでおきましょう。
築年数(非木造)
鉄筋コンクリートや重量鉄骨を使った非木造の一棟アパートでも、管理費は上下します。木造と比べて経年劣化が出にくいため、以下の相場になります。
物件タイプ | 相場 |
---|---|
単身向け:築10年以内 | 17,627円 |
単身向け:築20年以内 | 18,078円 |
単身向け:20年超 | 14,372円 |
ファミリー向け:10年以内 | 21,485円 |
ファミリー向け:20年以内 | 22,535円 |
ファミリー向け:20年超 | 18,553円 |
非木造のアパートは、20年を超えると管理費が安くなる傾向です。管理費設定の際は、意識しておくと良いでしょう。
一棟アパートの管理費に含まれている費用の内訳
一口に一棟アパートの管理費と言っても、様々な費用を合算した金額となっています。ここからは、管理費の内訳について解説します。管理費を決める際の参考にしてください。
- 委託管理費
- 入居募集用の費用
- 修繕費
- 修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 電気・水道代
- 雑費
委託管理費
委託管理費は、アパートの管理を業者に委託した場合に発生する費用です。委託する業務量によって変わります。持ち主として自分で管理するのも良いのですが、大きな負担となるため専門家に委託する方が無難です。
その際、おおよその相場は以下になります。
- 全てを委託:家賃の5%程度
- 一部を委託:家賃の2~3%
上記はあくまでも目安です。管理会社によって委託管理費は異なります。委託する際は、管理してもらう範囲を明確にした上で、契約すると良いでしょう。
入居募集時の費用
一棟アパートの管理費には、入居募集時の費用も含まれています。いわゆる不動産屋に支払う仲介手数料です。仲介手数料は個人では決められず、宅地建物取引業法によって以下のように定められています。
- 借主か貸主の一方から家賃1ヶ月分
- 借主と貸主で0.5ヶ月分ずつ
どちらも家賃1ヶ月分になるのは変わりません。ですが、貸主が借主1ヶ月分の仲介手数料を支払うのが慣例化しています。中には家賃1ヶ月分以外に、広告費が必要となるケースも。
不動産会社によって異なるため、入居募集時の費用は事前に確認しておきましょう。
修繕費
一棟アパートの管理費には、修繕費も含まれています。部屋や外観のリフォーム、クリーニング代です。自力でするのは難しいため、業者に依頼することとなります。
費用に関してはピンキリです。業者によって異なるため、HPを見て判断しましょう。コストパフォーマンスの良い業者を選ぶようにしてください。
また、修繕費は他のサービスと同じく繁忙期があります。シーズン中は料金が高くなるため、急がない場合はオフシーズンを狙う方法もオススメです。
修繕積立金
修繕積立金もアパートの管理費に含まれます。マンションやアパートで暮らしている方にとっては、身近に感じる費用でしょう。積立費用はアパートによって異なります。相場は5~8%程度です。
特に大規模な修繕となると、工事費は莫大な金額になります。赤字経営にならないためにも、計画立てて修繕費を積み立てていかなくてはなりません。
工事はおおよそ10~15年に1度行うため、逆算して積み立ててください。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税といった税金も、管理費に含まれます。土地・建物を所有していると課税される税金なので、必ず支払いましょう。
固定資産税は、3年ごとに見直される固定資産税評価額を課税基準として計算されます。
一棟アパートの場合、以下の軽減措置があります。
- 固定資産税(小規模住宅用地):課税標準の1/6に軽減
- 固定資産税(一般住宅用地):課税標準の1/3に軽減
- 都市計画税(小規模受託用地):課税標準の1/3に軽減
- 都市計画税(一般住宅用地):課税標準の2/3に軽減
このように、建物の大きさによって軽減される金額が変わります。アパートの大きさを事前に確認しておくと良いでしょう。
電気・水道代
アパートの管理費には、電気・水道代も含まれます。住民が必ず使用する以下の場所で、費用が発生します。
- エントランス
- 階段
- 廊下
- ゴミ置き場
- 共有部分
それほど高い金額にはなりません。年間で最大でも1万円を限度に設定すると良いでしょう。
雑費(諸経費)
一棟アパートの管理費には、雑費(諸経費)もかかってきます。代表的なものは以下です。
- 書籍新聞代
- 移動費
- 携帯電話やインターネットなどの通信費
これらには相場がありません。諸々の経費としてかかると認識しておきましょう。
一棟アパートの管理費として必要な初期費用
一棟アパートには、継続的にかかる管理費以外に、初期費用も必要です。管理費を考える場合は、両者をセットで考えておかなくてはいけません。
初期費用で代表的なものは以下です。
- 頭金
- 不動産所得税
- 印紙代
- 司法書士の費用
- ローン等の事務手数料
- 損害保険料
- 仲介手数料
頭金
一棟アパートの管理費において、頭金の初期投資は必要不可欠です。アパートを不動産の投資物件にする際、大多数の人は金融機関から融資を受けます。その際、頭金が必要です。
金額に決まりはありませんが、一般的に物件価格の10~30%が相場とされています。アパートを一棟買いする際は、まとまった金額が必要だと認識しておきましょう。
不動産所得税
一棟アパートに限らず、不動産を所得した場合は不動産所得税がかかります。所有した時点で支払い義務が発生します。
不動産所得税は、固定資産税評価額に対して3%の税率です。ただ、税率に関しては年度によって変更される可能性があるため、国土交通省や最寄りの市役所で確認しておくようにしましょう。
印紙税
一棟アパートの管理費として、購入時に印紙税が発生します。契約書に添付する収入印紙にかかる税金です。
印紙税額は一律ではありません。購入する物件の価格によって上下します。詳しくは国税庁の「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」を参照してください。
司法書士に支払う費用
一棟アパートの契約で司法書士に依頼した場合、報酬の費用が発生します。アパートに限らず、建物を購入した際は不動産に関わる権利関係を公示するための不動産登記が必要です。自力での申請は難しいため、基本的に司法書士に依頼することとなります。
登録免許税と呼ばれるのはそのためです。登録免許税は一律ではありません。固定資産税評価額に対して、以下の税率で課税されます。
登記名 | 税率 |
---|---|
所有権移転登記 | 2.0% |
住宅用家屋所有権保存登記 | 0.4% |
住宅用家屋所有権移転登記 | 2.0% |
抵当権設定登記 | 0.4% |
これらの他、司法書士への報酬もかかります。報酬金額に決まりはありませんが、10~15万円が相場です。上記の税率と合算して初期費用と考えてください。
ローン等の事務手数料
一棟アパートを購入する際、ローンを組むと事務手数料が発生します。ローンを組むと必ず発生する費用です。以下の2種類があります。
- 定額型:3~10万円
- 定率型:1~3%
定額型と定率型、どちらが優れているといったことはありません。固定金利・変動金利と同じように、長所短所がそれぞれあります。
どちらが良いかは、金融機関の担当と相談した上で決めると良いでしょう。
損害保険料
一棟アパートの管理費として、損害保険料も大切です。初期費用として必要になります。地震や水害などの災害に対しての保険なので、加入しておきましょう。不動産投資をするなら必須です。
近年は大規模災害が増えていることから、より求められています。保険料はアパートの規模によって異なります。3~5社ほどの保険会社に見積もりを依頼し、比較すると良いでしょう。
仲介手数料
一棟アパートを仲介会社からの紹介で購入した場合、仲介手数料が初期費用として発生します。金額は、宅地建物取引業法によって上限が定められています。
例えば400万円を超える物件だと、「物件価格✕3%+6万円」が上限額です。
新築の場合は売主による直販もあるため、仲介手数料が発生しないケースもあります。ケースバイケースなので、どのような形でアパートを購入するのかは事前に確認しておきましょう。仲介手数料が大きく変わります。
一棟アパートの管理費は入居者目線で考える
一棟アパートの管理費は、入居者目線で考えましょう。管理費とは、物件を管理して円滑に運営するための費用だからです。高すぎては不満が出ますし、安いと隅々まで手が回りません。良い落とし所を見つける必要があります。
近年は物件のポータルサイトで管理費まで細かく検索できます。他のアパートの管理費を参考にするのも1つの方法です。
入居者目線で考えながら、バランスの良い相場を探っていきましょう。
一棟アパートの管理費は様々な費用の合算
一棟アパートの管理費は、様々な費用が合算されたものです。アパートの管理・維持費だけでなく、税金まで含まれます。アパートを所有するにあたって非常に重要なので、計画立てて管理費を考える必要があります。
難しい場合は、入居者目線で考えると良いでしょう。入居者にとって、管理費は安いほど助かります。かといって、安いとアパート運営に支障が出ます。ちょうど良い落とし所を探りながら、管理費を設定してくださいね。