マンションの管理契約は大きく分けると3つの方式があることを知っていますか?
管理組合が主体となって行うにしても、法律や設備など専門的な知識を要することも多いマンション管理は実際には管理会社に委託することが多いものです。
どの程度管理を委託するのかについては「全部委託管理」「一部委託管理」「自主管理」によって異なりますが、それぞれの管理方法にはメリット・デメリットがあります。
この記事では、ベストなマンション管理を選択するために知っておきたいマンションの委託管理方法の種類や特徴について解説していきます。
マンション管理の役割と重要性
マンションが築年数が経過していってもずっと快適であり、魅力的なマンションであるためには管理をしっかり行うことが必要不可欠です。
マンション管理は、入居者が安全かつ気持ちよく暮らせるように建物の環境や設備を良い状態に保つことに加え、資産価値としてのマンションのスペックを維持する役割があります。
そして、その重要なマンション管理を行うのが「管理組合」と「管理会社」というわけです。
「管理組合」とは
管理組合とは、マンションの区分所有者全員で構成される団体のことをいいます。
マンションの維持管理を目的とし、マンションを購入すると、マンションを管理する当事者として「自動的に管理組合の一員」となります。
全員が組合員ではあるものの、全員で日々業務を遂行するわけではなく、通常は代表者の集まりが担い、意思決定を進めていきます。
マンションの管理形態の種類
マンションの最終的な管理の主体は「管理組合」にあります。
そのため、管理組合が管理会社にマンションの管理を委託したとしても、管理会社はあくまで管理組合より委託を受けた業務について法令を遵守しながら遂行していきます。
管理会社は専門的な知識に長けているので、管理組合の運営状況に応じた支援とアドバイスなどをする「コンサルタント」的な立場でサポートする役割だといえるでしょう。
マンションの管理形態の種類の詳細を解説します。
管理会社へ全部委託
マンションのすべての管理業務について管理会社に委託する形態の管理方法です。
新築マンションの場合は、分譲会社の関連会社が管理会社になっているケースが多く、管理サービスもセットになっている傾向があります。
管理会社に全面的に任せてサポートが受けられるので、組合員の負担はかなり軽減されますが、責任感や意識が薄れる懸念があるほか、費用が割高になるのは否めません。
国土交通省の行う「マンション総合調査(平成30年度マンション総合調査結果)」によると、全体の74.1%が全部委託となっていることからも、圧倒的に全部委託しているところが多いことが分かります。
実にマンションの4分の3は全部委託を取り入れていることになります。
管理会社へ一部委託(部分委託)
一部委託とは文字どおり、マンションの管理業務の一部を委託して、その他の業務は管理組合が直接行う委託方法です。
例えば、管理員業務や清掃業務、設備メンテナンスなどの専門業務は管理会社に委託して、管理費や修繕費の積立金の管理などの会計業務や事務管理業務などは管理組合で行うといった具合に委託する業務を分けるのです。
一部委託の方式を取り入れているマンションは、マンション総合調査によると全体の13.3%です。
管理組合による自主管理
自主管理とは、管理会社を利用せずにすべての業務を管理組合が直接行う方法です。
この方法は、マンション全体の6.8%ともっとも少ない管理方法で、比較的古い公団住宅や地方住宅供給公社のマンションに見られる傾向です。
管理会社に対する費用が発生しない点では割安になりますが、マンション内の人間関係トラブルの解決など心理的負担や管理業務に要する時間や労力への負担が大きくなります。
ただし、組合員自身が業務を行うことでマンション管理に対する意識や責任感の高まりが望めるのが利点です。
管理会社へ全部委託するメリット・デメリット
もはや一般的なケースとなっている、管理会社にすべての管理業務を委託する契約を採用するメリットとデメリットについて解説します。
全部委託のメリット
- 決議などの手間が少なくなる
- 精神的な負担が軽減される
- 管理会社の専門的なノウハウが学べる
- 最新情報を自ら取り入れなくても良い
すべての管理業務をプロに任せることができるので、労力や精神的な負担からも解放されます。
新しいサービスや取り組みなども積極的に提案が受けられるなど、自ら情報を集めなくても最新情報を得ることが可能です。
設備の不具合や事故が発生した際にも管理会社が速やかに対応してくれるので、安心感があります。
全部委託のデメリット
- 組合員の意識が薄くなる
- 入居者の希望と一致しない場合がある
- 委託費用がかかる
すべて任せられることで負担がない分、費用がかかります。
また組合員のマンション管理に対する意識は希薄になりがちです。
管理面も入居者の「住みやすさ」よりも、後々に「いかに売却しやすくなるか」に重きをおかれてしまう懸念があります。
管理会社へ一部委託(全部委託)するメリット・デメリット
管理業務を一部委託する契約では、すべてを任せきりにはしないので、できることは管理組合でまかなうことになります。
メリットとデメリットを解説していきます。
一部委託のメリット
- 委託する業務が一部なので費用を節約できる
- 一部は管理組合で管理するため責任意識が高まる
- 管理組合の意思を反映した効率の良い管理ができる
対応の良くない管理会社を変更したり、サービスやコストの良い管理会社を業務によって選択したりなど、自由度の高い管理ができるメリットがあります。
また、すべてを委託しているわけではない分、費用が全部委託よりはコストカットが可能です。
管理組合が主体となって担う部分も全部委託に比べて大きくなるので、管理組合の団結力が高まり、意思を反映した管理が行われるでしょう。
一部委託のデメリット
- 管理組合で進めることもあるので、手間がかかる
- 組合員のやる気や力量の影響が大きい
- 管理の質が落ちる可能性がある
管理組合で主導する部分も多いので手間がかかり、特に幹部には負担がかかります。
また、ある程度管理についての知識を有している人物がいないと厳しい側面があります。
管理組合による自主管理するメリット・デメリット
少ないケースではありますが、管理会社を利用せず、自分たちで自主管理するメリットとデメリットについて解説します。
自主管理のメリット
- 一部委託よりもさらに入居者の希望が反映された管理になる
- 管理会社を利用しないので、その分の費用がかからない
- 組合員の団結力や意識が高まる
管理会社にかかる費用の一切を節約できるのが最大のメリットです。
上手く管理できれば、コストパフォーマンスの良い管理が実現できます。
自主管理のデメリット
- すべてを自分たちでまかなう為、手間がかかる
- 有識者がいないと管理がより難しい
- 精神的にも負担が大きくなる
- 組合員の力量とやる気の影響力が一部委託よりも大きい
手間も精神的な負担も一番必要とします。
管理組合の組合員の中に管理会社の経験者や出身者がいるなど専門知識に詳しい人がいない場合はかなり難しい管理状況になり得ます。
マンション管理会社の業務範囲について
管理会社に委託できる業務は大きく分けて「事務管理業務」「清掃業務」「管理員業務」「建物・設備管理業務」の4つに分けられます。
それぞれの業務について詳細を解説していきます。
事務管理業務
- マンションの維持や修繕に関する計画、または実施の調整
- 管理組合の収支など会計業務
- 出納
- 理事会支援
- 総会支援
マンションの事務管理業務は、大きく分けて「基幹事務」と「基幹事務以外の管理業務」に分けられます。
基幹事務が会計に関することやマンションの維持や修繕に関わるもので、基幹事務以外は理事会支援や総会支援の業務などです。
また、滞納者への督促業務の一部も管理会社の業務に含まれます。
清掃業務
- 日常的な清掃
- 特別な清掃(定期清掃)
清掃業務は、日常清掃と定期清掃の2つに分けられます。
日常清掃とは、管理員や清掃員がマンションのエントランスや廊下、階段といった共用部の清掃を日々行うことをさします。
定期清掃とは、専門の清掃業者がポリッシャーなどの専用機械を使って、床の洗浄やワックス掛けなどを数か月に1度などの定期的に共用部の清掃を行うことです。
管理員業務
- 受付などの入退館管理業務
- 点検業務
- 立会業務
- 報告関連業務
管理員業務は、管理事務室にて訪問者の受付や対応をおこなったり、必要に応じてマンションの巡回や引っ越しや工事などの作業の立会をおこなったりします。
また、キッズルームやゲストルームなど共用スペースがある場合は、その管理や利用申込の受付なども行います。
騒音に関する苦情や不法駐車の撤去を求める連絡など、入居者からの苦情や要望についても対応することがあります。
建物・設備管理業務
- 建物の点検や検査
- エレベーター設備
- 給水設備
- 消防設備
- 電気設備など
建物・設備の管理業務は、マンション、エレベーター、消防設備、給水設備、電気設備など、ひと通りの法定点検や保守点検を行うことです。
入居者が安全かつ安心して暮らせるために、上記の点検以外にも定期的にマンション建物や設備について、目視点検や衛生管理なども行います。
マンション管理会社の種類と得意分野
マンションの管理会社という同じカテゴリでも、「デベロッパー系」「独立系」「ビルメンテナンス系」の3つに分かれ、それぞれ特徴や得意分野が異なります。
特徴やメリット・デメリットを知り、管理会社選びの参考にしてみてください。
デベロッパー系
デベロッパー系の管理会社は建設会社の子会社であることが多く、親会社がマンションの施工・販売を行っていて、マンション管理は子会社で担当するというパターンです。
施工した親会社と連携しているので、設計や建設に関する情報を持っている分、対応が素早く、質の高い管理サービスを受けられるのが最大のメリットです。
しかし、高品質なサービスである分、コストもかかるというデメリットがあります。
独立系
独立系とは、系列のグループ会社を持たない管理会社のことで、管理委託の費用は比較的安い傾向にあるものの、修繕などが発生した場合に過剰な工事や割高な工事を提案されることがあるようです。
管理費用が安いことが、単にマンション管理の質やサービスが良くないという場合もあるので、見極めが必要です。
費用面だけでなく、優良な会社であるかどうか業務の質をしっかり確認して判断しましょう。
ビルメンテナンス系
ビルメンテナンス系というのは、ビルやマンションのメンテナンス業務をメインとしている管理会社のことをさします。
ビルのメンテナンスが専門なので、設備管理や清掃などの方面に強みがあります。
そのため、建築や設備関連の有資格者が多く在籍しているものの、マンション管理専門の有資格者が少ないことがるので、有識者や経験者が管理組合の中にいる場合は、全部委託をするのではなく一部委託として契約するのも良い方法といえます。
安心できる管理会社の選び方
ここまでにご紹介したマンションの管理会社の特徴や業務内容、委託の方法をふまえて、安心して任せられる管理会社の選び方について解説します。
それぞれの管理組合の求める内容によって、適した管理会社は異なりますが、ポイントを押さえておくことで選択がしやすくなります。
よい管理会社とは?
安心して信頼できる管理会社のチェックポイントは以下の3つです。
- 財務管理のセンスがある
- 建物や設備の管理ができている
- 管理担当者に実績がある
財務管理のセンスがある
管理会社が財務管理をどのように行っているか、管理組合から預かったお金の分配、使途についてよく確認しておきましょう。
また、点検業務や修繕業務を委託している会社をどのように選定しているのかを確認すると、資金を効率よく使えているかが分かります。
滞納解消や回収についてノウハウがあるか、体制が整っているかもチェックしておくと安心です。
不明瞭な点を残さないように、気になる点は担当者から説明を受けることをおすすめします。
建物や設備の管理ができている
建物や設備についても、マンションの資産価値を下げないように長期修繕計画の作成や見直しに加えて、合理的な資金計画を立てているか等も重要な確認ポイントです。
大規模な修繕計画も大切ですが、日々の清掃や管理が行き届いていないと傷みや損傷を小さなうちに発見することができません。
共用部が清潔に保たれているか、電球などが切れていないかなど日常管理の取り組み方、丁寧に管理されているかも必ず確認しましょう。
管理担当者に実績がある
管理会社の担当者の技量やスキルも充実したマンション管理には欠かせません。
資格や経験を有しているのか、これまでの実績や現在の担当物件数なども確認しておきましょう。
管理の質を維持できるかどうか、管理に不満が発生した場合に改善に向けて対処ができるのかも大切なポイントです。
マンション管理は信頼できるところへ
マンションの管理は住みやすさだけでなく、マンションの資産価値に直結する重要なものです。
管理の委託方式や管理会社の種類、業務の内容を把握して、それぞれのニーズにあった管理会社を選びましょう。