マンションでは、定期的に大規模修繕が行われることを知っていますか?
この工事はマンションの劣化や不具合を修繕するのはもちろん、資産価値を維持するためにも必要な工事ですが、規模が大きいので多額の費用がかかります。
この記事では、マンションの大規模修繕の費用相場や工事費用を抑える対策について解説します。
マンションの大規模修繕とは?
車や戸建て、マンションなど、どんなものでも経年劣化は避けられないものです。
外観の美しさや機能性と資産価値を維持するためにも適切なメンテナンスを施すことが不可欠です。
マンションの大規模修繕とは、十数年ごとに行う大掛かりな補修工事のことをいいます。
マンションの大規模修繕はどうして必要?
マンションの大規模修繕はどうして必要なのかというと、古くなった外壁のタイルが崩れて住人などが怪我をしたり、古くなった設備を改善したりして、安心且つ快適に暮らせる環境を維持するためです。
また、複数の世帯が暮らすマンションは建物の規模も大きく、共用の部分も多いので、計画的に資金をつくり、全体的にまとめて修繕を実施するのが合理的でもあります。
そのため、マンションの大規模修繕は長期的に立てた修繕計画に沿って進められることが一般的なのです。
マンション大規模修繕の周期は12年~18年に1回
マンションの大規模修繕は十数年ごとに定期的に行われますが、1回目の大規模修繕に関して国土交通省では「築12年」を推奨しています。
もちろん「推奨」であって法律で定められているわけではないので、その周期はマンションのオーナーや管理組合が修繕計画に沿って進めていくことができます。
そのため、管理組合によっては「15年」や「18年」や「20年」と定めているところもあります。
2022年7月2日付けの日本経済新聞に「マンションの大規模修繕は12年程度で繰り返すのが一般的」と記載があった際に「18年周期などに間隔を延ばすところも増えている」とも記載があったことからもマンションの大規模修繕は「12年~18年程度」の周期には実施するのが理想的だといえそうです。
大規模修繕を実施する主な箇所
マンションの大規模修繕では、さまざまな場所の補修を行いますが、どの場所の修繕を行うかは大規模修繕前の建物診断の結果で決定されます。
どのくらい費用がかかるのかは、建物の種類や資材、修繕の内容によって変わってきます。
その中でも大規模修繕にかかる費用のウェイトを大きく占める主な修繕箇所は以下の5つです。
- 電気や給水、防火などの設備
- マンションの外装や外壁
- シーリング
- 屋上やバルコニー
- 廊下や階段などマンションの共用部分
マンションの大規模修繕はどんなことをする?
マンションの大規模修繕は、建物すべてを囲うように足場を組み立てて、上記で挙げた主な修繕箇所に対して補修や修繕工事を行ったり、設備や資材の交換を行ったりします。
建物の外部は太陽の紫外線や雨風などの気候の変化や気温の変化の影響により劣化や損傷が顕著に表れるので、外壁タイルの補修をはじめ塗装やフェンスや植栽の設備補修なども行われます。
その他にも照明器具や基盤などの電気設備や給水管・廃水管の補修や交換といった給水設備、ガス機器やガス管などのガス設備など生活に欠かせない設備関係の修繕または交換もあります。
また、大規模修繕のタイミングで宅配ボックスやオートロック、インターホンをモニター式にするなど住環境の設備をアップグレードさせることもあるようです。
マンション大規模修繕にかかる費用は?
マンションの大規模修繕にかかる費用は、マンションの規模や工事の内容などによってさまざまです。
国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(2017年5~7月対象)によると、1回目の大規模修繕工事にかかる修繕費用の大まかな目安は「住戸数が20戸の場合は2,000万円」「住戸数が100戸の場合は1億円」となっています。
戸数ではなく床面積での目安は、床面積1㎡あたりの1回目の工事金額を8,500~13,000円前後としており、平均で約13,000円だとしています。
マンション大規模修繕費用の相場は?
マンションの大規模修繕費用の相場は、一戸につき約75万円~125万円だと一般的にはいわれていますが、マンションの規模や修繕の度合い、または業者によって異なります。
実際にかかる費用は相場よりも上下に変動することを想定しておきましょう。
マンション大規模修繕の費用はどこから算出される?
マンションの大規模修繕の費用は、基本的に毎月の住宅ローン返済と共に支払っている「修繕積立金」から算出されることがほとんどです。
修繕積立金の金額は、将来想定している大規模修繕工事の計画予算から逆算して設定した金額を負担します。
修繕費用はずっと定額?変動する?
大規模修繕工事の費用はずっと定額かというと、値上がりする可能性の方が高いです。
なぜなら、年月が経過するにつれて劣化は免れないので、修繕や交換は増えることがあっても減ることはないからです。
国土交通省が実施した調査によると実際、「積立金が不足している」と回答した管理組合は34.8%にものぼっています。
マンション大規模修繕は工事の内容によって費用が変わる?
マンションの大規模修繕は工事によって費用が変わる?
マンションの大規模修繕は、工事をする場所によって費用が異なります。
それぞれの工事によって修繕の難易度や資材も変わってくるからです。
どこの工事にどのくらいの費用がかかるのか相場について解説します。
給水や排水など水回り工事の費用相場
先述でも触れましたが、電気や給水、防火などの設備関連の補修や交換も大規模修繕工事の内容に含まれます。
給水や排水など水回りに関する工事の費用相場は、1棟につき約70万円~200万円と戸数によって費用は変動し、戸数が多くなるにつれて高額になっていきます。
給水や排水に使用するパイプは耐用年数が15~20年ほどはあるものの、配管の交換工事はコストも時間もかかるので、大規模修繕工事のタイミングで不具合が見られない場合であっても行っておくのが合理的です。
防水工事の費用相場
屋上やバルコニーは屋外なので雨風や日光にさらされて劣化が激しく、雨漏りを防ぐための防水工事を中心として補修が行われます。
防水工事の場合はその種類によって費用相場が異なってきます。
一般的にはウレタン塗装防水が用いられる場合が多く、バルコニーや共用廊下や階段は防滑性塩ビシート防水が用いられる場合が多いです。
防水工事の種類と費用相場は以下のとおりです。
マンションの防水工事は必須なので、ぜひ参考にしてみてください。
- ウレタン防水:3,500~6,000円
- アスファルト防水:3,000~6,500円
- シート防水:3,000~6,500円
マンションの外装塗装工事の費用相場
マンションの外装塗装の工事費用相場は、1㎡につき約3,000~7,000円といわれています。
この相場金額に実際に塗装する外壁の面積をかけて算出した金額が、外壁塗装にかかる費用の目安になります。
相場の費用は、塗料のグレードによっても大きく変わってきます。
シリコンやフッ素、ラジカルといった塗料であれば、1㎡につき3,000~4,000円が相場ですが、セラミックや光触媒や無機塗料になると1㎡につき5,000円以上になることも少なくありません。
外壁塗装工事は、塗装する範囲に足場を組み、高圧洗浄、ヒビ割れや錆などの下処理や養生などを行ってから塗装が開始になります。
工程が複数に及ぶこともあり、外壁塗装工事は規模の小さなマンションで1~3か月程度、50戸以上のマンションで3~5か月程度の期間を要することを予め念頭に入れておく必要があります。
足場や飛散シートにかかる費用相場
マンションの大規模修繕工事では、足場や飛散シートが使用されます。
足場の費用は種類によって変動がありますが、足場や飛散シートの費用相場は1㎡につき約600~1500円です。
足場の種類は主に3種類あり、それぞれメリットとデメリットがあります。
それぞれの特徴について解説します。
足場の種類 | 費用 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ビケ足場 | 安い | ●耐久性や強度が強い ●組立や解体が簡単なので工期を短くできる |
●設置できる場所が限られる |
枠組み足場 | 高い | ●設置場所を選ばない ●強度が高い |
●部材が多く、コストが高くなる |
単管足場 | 安い | ●狭い場所でも設置できる | ●工期がかかる ●他の足場より安全性が劣る |
マンションの大規模修繕費用を抑える方法は4つ
マンションの大規模修繕工事は費用が高額になるため、できるだけコストは抑えたいところです。
修繕費用を抑える方法について4つ紹介していきます。
- 建物の状態をきちんと把握する
- 信頼できる業者を見つける
- 相見積りで3社以上を比較する
- 問題が発生する前に対処する
建物の状態をきちんと把握する
修繕工事の有効性を上げるためには、適切な工事内容が見積りに反映されるように、建物自体の状態を正確に把握することが非常に重要です。
工事の前に改めて建物の調査を行い、修繕の必要性を場所ごとにチェックすることも大切ですが、日頃の管理や定期メンテナンスの段階から把握できていると調査結果や提案内容に応じて主体的な判断をするのに役立ちます。
信頼できる業者を見つける
マンションの大規模修繕が1回目の場合など、見積にある専門用語の理解が難しいケースが少なくありません。
専門知識がなくても分かりやすく説明や助言をしてくれる信頼できる業者を見つけると安心して修繕工事を進めることができます。
大規模修繕工事は準備段階から実際に施行されるまで約2年ほどの長期にわたる計画なので、コミュニケーションの取りやすい業者を見つけることがファーストステップといっても過言ではありません。
相見積もりで3社以上を比較する
修繕工事を適正な価格で進めるために、複数の業者から相見積りを取ることは重要です。
この場合のポイントは、「少なくとも3社以上に依頼すること」と「タイプの異なる業者に見積りを依頼すること」です。
相見積りを取ることで「修繕内容の内訳」と「工事料金」を比較することができます。
適正価格を把握した上でどの業者に依頼するのか検討段階に進みましょう。
問題が発生する前に対処する
大きなトラブルに発展する前に対処しておくことで、修繕費用が抑えられることがあります。
そのためには、定期的なメンテナンスにより先述のとおり建物の状態を把握し、点検やお手入れを行っておくことが有効です。
大規模修繕費用のためにできる対策
修繕費用が不足してしまう事態を避けるための具体的な対策を紹介します。
- 修繕費用の積立を増やす
- 融資や共済を利用する
- 補助金や助成金の活用
- クレジットカードの利用
修繕費用の貯蓄をする
資材の高騰や人件費の上昇など、将来的な大規模修繕を考えたとき「修繕費用が足りなくなるかも」という懸念がある際に、第一に考えられる対策は「修繕費用の貯蓄=修繕積立金」の金額を増やすことです。
大規模修繕計画の見直しなど段階的に修繕積立金を値上げしていくことで、大規模修繕の実施に向けて備えることができます。
融資や共済を利用する
1棟マンションオーナーの場合、「オーナー向けの賃貸住宅修繕共済」や「金融機関による融資」を受けるのも一つの方法です。
ただし、共済の場合には共済掛金が、融資を受けた場合には返済が生じるというデメリットがあることも理解しておきましょう。
補助金や助成金の活用
マンションの大規模修繕の場合、国や自治体による補助金や助成金を利用できることがあります。
適用条件や内容については各自治体によって異なるため、どのような補助金や助成金があるのかを確認して積極的に利用することをおすすめします。
定期的なメンテナンスが最善の対策になる
マンションの大規模修繕は避けられないかもしれませんが、日頃のメンテナンスや定期的なメンテナンスをしっかりと行っておくことで、建物の劣化スピードを遅らせることができたり、破損などを未然に防ぐことができたりするため、修繕費を抑えることができます。
なぜなら、定期に行うメンテナンスが行き届いていれば、大規模修繕の工事内容と工事期間をグッと短縮できる可能性が高くなるからです。
総合的なマンション管理サービスがおすすめ
安心して任せられるマンション管理サービスを利用することは、マンションの大規模修繕費用の削減だけでなく資産価値の向上・維持にとっても最善の対策となります。
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