管理している部屋で孤独死が起きた場合の清掃は必ず専門の業者に依頼しましょう。
なぜなら、部屋の腐敗が酷く汚れていたり細菌が付いていたりと特殊な処理が必要になるケースが多いからです。
この記事では、孤独死の清掃について理解を深め、孤独死に遭遇した場合に適切な処理ができるよう解説していきます。
不測の事態に備えるべく、参考にしてみてください。
孤独死の清掃は遺体処理業者への依頼が必須
結論から言うと、孤独死の清掃は特殊清掃を行う業者へ依頼することが必須です。
特殊清掃業者とは、孤独死によって腐敗した死体や部屋に染みついた悪臭を、綺麗に取り除いてくれる業者をさします。
特殊清掃業者以外の専門的な技術や経験、知識がない人が行うことはできないと考えておきましょう。
余計な労力は使わず、速やかに特殊清掃業者に依頼して、部屋の状態を整えてもらいましょう。
孤独死の清掃を必ず特殊清掃業者に依頼するべき6つの理由
孤独死は発見までに期間を要しているケースが多いです。
そのため、死体が腐敗して骨が見えていたり、カーペットや畳に体液が染みついたりすることもあります。
専門業者以外では、たとえ見た目にはキレイに清掃できたとしても十分な状態までキレイにできないことがほとんどです。
ここでは、孤独死が起こった場合に必ず特殊清掃業者に依頼すべき理由を6つ紹介します。
プロによる汚染除去作業でないと完全に除去できない
遺体が腐敗をすると遺体から漏れ出た体液などで床や畳などに汚染が広がります。
こうした汚れは通常の清掃ではキレイにすることはできず、専門的な汚染除去作業が必要になります。
また、ウィルスや病原菌がどこに潜んでいるのか等、汚染の状況はプロでも目視で確認するのは困難です。
徹底的な洗浄と消毒
孤独死などの特別な清掃では、細かな隙間に対しても特殊清掃専用の薬剤や機器を使用して徹底的な除菌洗浄と消毒を行います。
こうした特殊清掃によって、床や壁に残った汚染物の除去はもちろん、害虫や害獣の糞や媒介する菌なども一緒に駆除と除菌ができます。
ここまで徹底した掃除ができるのは、「孤独死」という特殊な状況に対応してくれる、プロの特殊清掃業者にしか出来ないことです。
防臭などの異臭対策が必要
孤独死の部屋には、遺体より出た「血液」「胃液」「腸から出た腐敗液」などによって強烈な死臭が漂います。
死臭は自然に消えることがなく、通常の清掃では臭いを落としきることは不可能です。
室内の腐敗臭は、そのままにしておくと周囲に悪臭をまき散らし、新たに近隣トラブルを招く恐れがあります。
建物の資産価値も下げる
死臭を放っておくことは、建物や物件の価値を下げることにつながります。
賃貸物件の場合は原状回復費用が高額になりかねません。
孤独死が発生した場合には、特殊清掃による防臭作業や臭い対策を必ずしなくてはならないことなのです。
感染症などの予防
特殊清掃では、感染症の予防対策も行わなくてはいけません。
遺体から染み出た体液や血液には多くの細菌や雑菌が含まれ、特に血液はC型肝炎や伝染病の元になるウィルスが含まれている可能性が高く大変危険です。
新型コロナウイルスの影響により防護服での除菌や除染を行う姿が多くなりましたが、孤独死の現場ではより一層の重装備で殺菌生の強い薬剤を噴射して除菌を行います。
感染症予防対策はプロだからこそできる
孤独死の現場で害虫が発生していた場合、伝染病を媒介する恐れもあるため特殊清掃のような処置が必要になります。
実際には部屋の空気を特殊な機械で清浄し、かつ壁や床も徹底的に除染して害虫や害獣の発生しないよう完璧なまでの除菌清掃を行います。
ここまでの感染症の予防対策はプロだからこそできることであり、とうてい素人ができることではありません。
心理的ショックが普通の人には大きい
孤独死の現場を目にすることは、心理的負担やショックが大きいものです。
予想以上のショックを受けて精神的に動揺する可能性が高く、酷い場合にはPTSDやトラウマを抱え心身に不調をきたす事態になりかねません。
こうした、精神的・心理的な安全面を考えても、孤独死の現場清掃はプロに依頼をするべきです。
故人の供養をしてくれる
特殊清掃業者の中には、部屋の清掃だけでなく故人の「供養や葬儀」まで請け負ってくれる業者もあります。
清掃業者による供養や葬儀は、オプションでの依頼として扱っているケースがほとんどです。
立ち会い不要で遺品整理から、遺体の搬送、葬儀、供養までを引き受けてくれる特殊清掃業者を選ぶと親族が遠方の場合でも安心して依頼できるでしょう。
孤独死の現場を清掃するときのステップ5つ
孤独死が起きても、清掃の流れを知っておけば慌てずに落ち着いて対処ができます。
孤独死の現場を清掃を手配するときは、以下の5つのステップで進めましょう。
1.警察による現場検証が必要
孤独死を発見したら、まずは警察に通報し、現場検証を行ってもらいましょう。
孤独死は悪臭をきっかけに住民から連絡が入り、管理人によって発見されるというケースが多いです。
もし、第一発見者となってしまったら、無闇に部屋の中へ入るのは控え、警察の到着を待ちましょう。
孤独死を発見した段階では原因が特定できていないため、殺人事件である可能性も0ではありません。
たとえ家族が駆けつけていたとしても、「事故死」「自殺」「衰弱死」など、死因が特定されるまでは中に入れてはいけませんので、注意が必要です。
2.特殊清掃業者へ見積もりを依頼する
警察による現場検証が終わり、警察から入室許可が出たら特殊清掃業者へ見積もり依頼をします。
悪臭など近所に迷惑をかけている状況が続くため、できるだけ早く見積もりを出してもらう必要があります。
正確には現場見積もりが必要ですが、間取りを伝えることである程度の予算を教えてもらえることもあります。
どちらにしても、できる限り早めに相談しておくことがポイントです。
3.特殊清掃の実施
見積もり費用と内容を確認したら、できる限りの早い日程で特殊清掃の実施する必要があります。
即日対応している特殊清掃業者も多いため、まずは「今日来て欲しい」と要望を伝えてみましょう。
清掃当日は、特殊清掃業者の来る時間に合わせて鍵の受け渡しを行います。
もし、家族から遺品や貴重品について捜索の依頼など希望がある場合は、確認しておきましょう。
4.遺品整理を行う
遺品整理をする場合は、特殊清掃を終えた後に行います。
その際、マスクや手袋が必須なので、あらかじめ準備してください。
孤独死の場合、腐敗した死体によって汚染されており、虫や雑菌などのため家財が腐敗しているケースも少なくありません。
そのため、残っている遺品については、あまり期待はできないと考えておきましょう。
5.消毒・消臭の確認
室内での作業が終わったら、特殊な消毒・消臭により、改めて消毒・消臭を徹底的に行います。
最後に、実際に悪臭が消えているかを確認して、OKであればようやく特殊清掃は終了となります。
このとき、回収した遺品や部屋の鍵の受け取りを必ず忘れずに行いましょう。
6.リフォームをする
孤独死の発生から清掃までの期間が空いた場合、床や壁に体液や悪臭が染み付きリフォームせざるを得ないケースもあります。
リフォーム作業ではフローリングや壁紙の張替えや備品の交換などを行います。
その際、清掃からリフォームまで一緒に依頼できる業者に依頼ができれば、別々に依頼するよりも費用を抑えられます。
特殊清掃業者とは
特殊清掃業者とは、孤独死が起こった部屋の清掃を行うエキスパートであり、高いスキルと専門性が要求されます。
特殊清掃業者について、スキルや作業内容などを解説していきます。
特殊清掃のスキル
特殊清掃は、高い専門性が必要な仕事であり、高度な知識と経験が要求されます。
孤独死の起こった現場の処理といった特殊なケースに対応するため、医療環境管理士、防除作業監督者、臭気判定士などの資格を取得する人も多いです。
また、特殊清掃の現場は、ほとんどが遺体の損傷が激しいケースとなるため、エンバーミング(外見回復処置)などのスキルも要求されます。
特殊清掃業者の作業内容
特殊清掃の作業内容は、以下のような清掃だけでなく変死体のあった部屋の現状復帰までを広く請け負います。
<特殊清掃の作業内容>
- 汚染物質除去
- 血液や体液
- 肉片の除去
- 衛生害虫の害虫駆除
- 残置物処理
- 室内解体工事
- 臭気の消臭や防臭
一般の清掃業者では対応が難しいため、専門の業者が依頼を受けて清掃を行います。
また、特殊清掃は緊急性が高いため、24時間年中無休の業者がほとんどで最短即日に対応してくれる業者もあります。
<特殊清掃業者の作業現場>
- 孤独死や孤立死が起きた部屋
- 自殺があった部屋
- 事件で人が亡くなった部屋
- ゴミ屋敷
特殊清掃業者による作業費用の目安
発見までの日数を死後3週間と想定した場合の特殊清掃業者の費用目安について、間取り毎の料金相場をまとめてみました。
間取り毎の特殊清掃費用・相場
一般的に部屋の広さや汚染している範囲が広くなれば、その分清掃費用は高くなります。
また、清掃費用の他にサービス別に料金相場が変わってきます。
特殊清掃費用の相場:オプションなど
作業内容の費用相場は以下のとおりです。
供養については、業者によって無料とオプションサービスとして有料となるかに分かれます。
葬儀や埋葬、供養についての詳細は、特殊清掃の料金と合わせて確認しておきましょう。
特殊清掃業者の作業期間について
特殊清掃業者の作業は、すべての工程を終えるまでに2〜3日かかります。
また、作業の内訳は特殊清掃が1.5〜4.0時間程度で、消臭などの作業を加えると平均2〜3日の時間がかかります。
間取り毎の清掃時間と消臭を含めた時間をまとめてみました。
間取り毎の特殊清掃の作業時間
下記のように特殊清掃の作業自体は、数時間〜1日以内に終わります。
しかし、防臭や消臭などの作業は、オゾン発生機器や除菌・防臭剤を使っても最短で2〜3日の時間を要します。
また、大規模工事や現状復帰が必要になった場合は、工事が終わるのに数日〜1週間程度時間がかかってしまうこともあります。
実は増えている高齢者以外の孤独死
孤独死という言葉から「高齢者」をイメージする人が多いかもしれません。
確かに、多くの高齢者が孤独死をしていることも事実ですが、近頃は若者の孤独死も増加傾向にあり大きな社会問題となっています。
なぜ、若者の孤独死事案が増加しているのか、実情と理由について解説します。
経済的な事情により孤独死が増えている
まず、若者の孤独死が増えている理由のひとつに、若年層の経済的な事情が挙げられます。
厚生労働白書によると、若年層の完全失業率や非正規雇用の割合は近年増加しています。
そのため、貧困に苦しむ若者が増え、孤独死も増えつつあるのだと考えられます。
非婚者の増加により孤独死が増えている
次に挙げられる理由は、晩婚化や未婚者・非婚者の増加です。
結婚しない人が増えたことにより、独身の一人暮らしが多くなり、孤独死も増加していると考えられています。
若く健康なうちには問題がなくても、想定していないような怪我や病気にかかるなどの問題が生じた場合、リスクが高くなります。
人付き合いの多様化により孤独死が増えている
三つ目の理由として、人付き合いの多様化が挙げられます。
リアルではなく、SNSといったネット上で人間関係を構築する傾向が強くなった結果として、孤独死が増加していることがあるようです。
また、ひと昔前とは異なり、隣に住んでいる人の顔も知らないことが少なくありません。
現代では、近所付き合いも希薄なため、病気や突発的なトラブルがあっても助けを求めづらいという実情があります。
孤独死の特殊清掃費用は誰が支払う?
孤独死の特殊清掃費用は、基本的に故人の預貯金や加入している保険で支払います。
ただし、本人の資産で支払えない場合、持ち家と賃貸住宅で清掃費用の責任を負う人が異なるので解説します。
持ち家で孤独死した場合
持ち家で孤独死した場合、特殊清掃費用の支払い責任は「法定相続人」が負います。
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、故人の預貯金や保険などの資産を相続する者をさします。
何らかの事情により法定相続人が清掃費用を支払えない場合、3ヵ月以内に家庭裁判所で相続人放棄の手続きを行うことが必要です。
賃貸住宅で孤独死した場合
賃貸住宅で孤独死した場合に支払いの責任は次の順番で発生します。
- 故人本人の資産(預貯金・保険)
- 連帯保証人
- 賃貸保証会社(管理会社や大家が加入している保険も含む)
- 不動産管理会社と大家(部屋の所有者)へ順番に確認しましょう。
亡くなった本人が支払う
賃貸住宅で孤独死した場合は、まず亡くなった本人の預貯金や保険から費用を支払います。
本人の資産で支払えなかった場合は連帯保証人が責任を負う
一般的に賃貸物件に入居する際には、連帯保証人が必要です。
そのため、本人の資産で支払いがまかなえなかった場合には、連帯保証人が責任を負うことになります。
もし、孤独死をした人が親兄弟などであっても、家族が連帯保証人でないのであれば支払う義務はありません。
ただし、本人の資産を相続せず、必ず相続放棄をしてください。
管理会社や大家さんから、家族であることを理由に費用の請求があったとしても、相続を放棄していれば支払う義務はありません。
連帯保証人の次は賃貸保証会社に支払い責任がある
賃貸保証会社とは、賃貸住宅に入居する際に貸借人の連帯保証人を代行する会社をさします。
連帯保証人が清掃費用を出せないケースや、そもそも保証人がいないケースでは賃貸保証会社が支払い責任を負います。
なぜなら、保証会社は賃借人との契約によって、賃借人が家賃を滞納した場合などに賃借人に代わって家賃を支払う責任を負っているからです。
誰も支払う人がいない場合は管理会社や大家が支払う
連帯保証人や賃貸保証会社が支払えないケースでは、管理会社や大家さんが責任を負い費用を支払うことになります。
しかし、傷害保険などに加入した場合は、そこから支払われる場合もあります。
孤独死の清掃はプロによるスピード感ある対処が重要
孤独死が起きた部屋の処理について紹介しました。
孤独死は独居老人の人口増加や非婚の増加などの問題が進む日本では、他人事ではなくなっているのが実状です。
発見が遅れた孤独死の現場は凄惨な状態になってるため、専門的な処理が必要不可欠です。
衛生面や発見者の心理的・精神的な影響も考慮し、部屋の清掃は必ず特殊清掃業者に依頼しましょう。